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◆未公開株詐欺・社債詐欺・投資事業組合詐欺等 |
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未公開株詐欺とは、「近々、必ず上場する。上場したら確実に値上がりする。」などと説明して言葉巧みに被害者を信用させ、株式購入代金名下でお金をだまし取る詐欺です。その手口は、(1)上場見込みのないベンチャー会社の株式を扱うパターンとして、@ベンチャー会社が自社株の新株発行にあたって投資者を募集する形、A別会社(詐欺師)がベンチャー会社の株式を販売する形があり、(2)実在する有名企業(未上場)の株式を扱うパターンとして、別会社(詐欺師)がその有名企業の株式を販売する形があります。 社債詐欺とは、実体のない会社の社債を販売し、お金をだまし取る詐欺です。社債をめぐる詐欺には様々なパターンがあります。NPO法人などをかたって社債を販売するケース、元本保証や高利回りに加え、会社の将来性をアピールして株式への転換が可能であると誘い、実体のない会社の社債を販売するケース、社債発行会社と買取業者など数社から相次いで勧誘を受ける劇場型といわれる詐欺があります。 投資事業組合詐欺とは、元本保証や高配当をうたって、投資ファンドや未公開株等に投資する投資事業有限責任組合に出資させるというものです。しかし、実際には、組合が出資先とする未公開株発行会社が実体のない会社であったり、そもそも投資自体がなされておらず、単に出資金集めだけを目的とするものであって、これも詐欺にあたります。なお、このように投資事業有限責任組合の組合員になることを勧誘して未公開株への出資を募るという形式をとることによって、平成18年法律第65号による改正前の証券取引法の規制を免れようとする業者が数多く見られましたが、現在は、自己募集については「第二種金融商品取引業」、自己運用については「投資運用業」に該当し、いずれも金融商品取引法の規制を受けることになります。 2011年2月17日発表の国民生活センターの報道発表資料によると、2010年、全国の消費生活センターには、未公開株や社債に関する相談が、過去最高であった2009年度の相談件数を大きく上回るペースで寄せられており、2010年度に未公開株・社債の被害で支払われた金額は約283億円、2001年度以降の累計は約860億円にものぼる(2011年1月31日現在)ということであります。「金融庁」、「証券取引等監視委員会」などの公的機関や「証券会社」などをかたって、電話やダイレクトメールで勧誘してくるケース(「かたり商法」)、過去に未公開株や社債のほか、商品デリバティブ取引の経験のある高齢者がねらわれていること(二次被害)が多いので注意が必要です。 |
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(1)未公開株詐欺 |
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【事例1】かたり商法 |
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被害者は、ある日、突然、A社の担当者から電話があり、「当社の1株50万円の未公開株を買っていただけませんか?来年3月までに上場します。上場すると株価が少なくとも3倍以上値上がりします。」と言われたが、お金がないと断ると、担当者は、「あなた様には特別に半額の25万円でお売りします。」、「心配でしたら証券取引等監視委員会に連絡して下さい。」と言った。被害者は、担当者から聞いた証券取引等監視委員会の電話番号に電話したところ、「確かにA社は上場する予定です。」と言われ、25万円をA社の指定された口座に振り込んだ。その後、翌年3月を過ぎてもA社が上場することがなかったため、被害者は、A社と担当者から聞いた証券取引等監視委員会の電話番号に問い合わせたが、連絡がつかなくなっていた。あわてて金融庁に証券取引等監視委員会の電話番号を確認したところ、担当者から聞いた電話番号と違っていた。 |
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【事例2】二次被害 |
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被害者は、以前、未公開株等で1000万円の損をしたことがあった。ある日、A社の担当者から電話があり、「損を全部取り戻すことができます。X銀行(実在する未上場の銀行)の株式が近く上場する予定であります。当社はX銀行と特別な関係にあるので、その情報をあなたにだけ教えます。」と言われた。被害者は、担当者の勧めに応じて、600万円でX銀行の未公開株3株を購入した。その後、被害者は、X銀行に問い合わせたところ、「上場予定は今のところない。」と説明を受けた。X銀行の株は譲渡制限株式であり、現実には換価することが難しく、実際の価値は1株20万円程度であることが分かった。 |
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(2)社債詐欺 |
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【事例】劇場型詐欺 |
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被害者は、ある日、買取業者A社から、「X社のパンフレットが届いていませんか。」と電話があったが、届いていないと答えた。後日、X社からパンフレットが届き、タイミングよく再びA社から電話があった。被害者は、「X社からパンフレットが届いた」ことを伝えると、A社は「X社は、太陽光パネルを研究・開発している会社で、急成長しています。X社の社債を買ってくれたら、当社が買値の2倍で購入するので、是非X社の社債を買って欲しい。」と言われた。その後、被害者は、X社から電話が入り、「当社の社債を購入して欲しい。」という勧誘を受け、500万円分の社債を購入した。しかし、被害者は、いざ売ろうとしてもA社と連絡が取れなくなってしまった。 |
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(3)投資事業組合詐欺 |
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【事例】 |
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基本的には、未公開株詐欺の被害事例と同じである。業者(詐欺師)自身が直接未公開株を販売するのではなく、被害者に対し、高配当をうたって、未公開株に投資する投資事業有限責任組合の組合員になることを勧誘して、未公開株への出資を募るものである。 |
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被害者としては、二次被害を防止すること、詐欺による財産的損害を回復することが重要となります。 被害に遭われた方は、まず消費生活センターや弁護士、警察などに相談して下さい。どうせ、被害回復など無理だと考えて、そのままにしておくと、詐欺業者に再び狙われることがあります(「発行会社からパンフレットが届いていませんか。」、「過去の未公開株の損を取り戻しませんか。」などの勧誘を受けることがあります)。また、被害者本人が詐欺に遭ったことに気付いていない場合、あるいは、本人が詐欺に遭ったことを認めたくない場合もありますが、こうした場合には、家族や友人が本人を説得して、場合によっては本人と一緒に消費生活センターなどに行ってあげることが必要となります。 次に、詐欺による財産的損害をどう回復するかについてでありますが、騙された本人が詐欺業者と交渉してもうまくいかないと思われますので、消費生活センターや弁護士に相談して詐欺業者と交渉してもらうのがよいです。もっとも、詐欺業者の行方がすでに分からなくなっていたり、詐欺業者に財産が見あたらない場合などがあり、詐欺による財産的損害の回復は困難であることが多いです。ただ、被害者が投資資金を金融機関の口座に振り込んでいた場合には、金融機関に連絡して犯罪に使われた口座を凍結し、残金を戻してもらえる手続きもあります。 |
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未公開株詐欺については、多数の裁判例が、未公開株を販売した会社、その代表取締役、その他の役員、及び勧誘担当者の不法行為責任を認めています。 札幌地方裁判所平成22年4月22日判決は、未公開株販売会社(有限会社)の代表に就任してから約2か月後に同社の未公開株販売業務を停止させた代表取締役の責任を請求した事案であります。同判決では、未公開株販売会社は、証券取引業の登録を受けていなかったこと、勧誘担当者は被害者に対し本件未公開株式は上場確実で、上場すれば株価は購入代金の2倍、3倍になる旨の断定的判断の提供による勧誘をしたこと、本件未公開株式はグリーンシート銘柄には該当しないこと(日本証券業協会の自主規制である「店頭有価証券に関する規則」において、グリーンシート銘柄を除き取引の勧誘が原則として禁止されている)、本件未公開株式については上場予定はなく、本件未公開株式の販売価格は実際の価値よりも著しく高額であった事実を認定し、未公開株販売会社が被害者に対し本件未公開株式を販売した行為は不法行為(民法709条)に該当するとしました。そして、その代表取締役については、その取締役就任前から未公開株式の銘柄の選定、仕入れ及び情報の提供をし、従業員を指導する等して、販売会社における未公開株式の販売において中心的・主導的役割を果たしていたことから、取締役に就任した直後から、証券取引業の登録をしないまま、グリーンシート銘柄でもない未公開株式を著しく高額で販売することを中止するよう指示・指導すべきであり、それを怠ったことに重大な過失が認められるとして、その代表取締役は会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律25条、有限会社法30条の3第1項に基づく損害賠償責任を負うと判示しました。 |
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