札幌で証券取引(株、投資信託、仕組債、通貨オプション等)、先物取引等の投資取引被害救済にあたる弁護士有志のグループです。
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デリバティブ(仕組債、通貨オプション等)110番の結果報告
 平成23年11月8日、札幌金融商品問題研究会の弁護士5名により、110番を行いました。なお、この110番は、全国証券問題研究会の主催で、同日、全国で行われたものです。
1 相談件数について
 全国での相談件数は106件で、うち、北海道での相談件数は14件でした。
2 相談事例の傾向
 相談事例としては、銀行(道内のある銀行)が、高齢者(60代〜80代)に対して、30年満期の1000万円以上の仕組債(為替連動債)を勧誘している事例が目立ちました。この債券は、外国企業(大手証券会社の関連企業)が発行する外国債券で、30年後にドル建てで償還される商品です(銀行は仲介をする立場です。)。債券に為替オプションが組み込まれており、仕組が極めて複雑なものです。1年目には、5〜10%の固定金利が受け取れますが、2年目以降の利息は複雑な計算式による円とドルの為替レートに連動した利率に従うことになっています。「早期償還条項」が付されており、為替相場が円安・ドル高になった場合には、債券の券面額の2〜3割という高利息を貰えたうえに申込から3年〜5年程度で全額、円で償還される特約が付いています。反面、為替相場が円高・ドル安になった場合には、中途解約ができず(仮に、できたとして券面額の半分以下しか戻ってこない。)、30年間、利息ももらえずに塩漬けになり、30年後に申込時のレートで算出したドルで償還されます(申込時の為替レートが1ドル115円で、1000万円申し込んでいれば、約8万7000ドル償還されます。30年後の為替レートが1ドル65円になっていれば、8万7000ドルは30年後、約570万円の価値しかなく、結果として大きな為替損も被ります。)。
 相談者は、外国為替取引には全く縁のない高齢者が多く、老後の生活資金を預けています。不満の内容は概ね「金利が全くつかないうえに中途解約にも応じてもらえない。」、「銀行員から、それほど円高が進まない前提で、数年で償還されるということを強調されて申し込んだ。30年間も償還されないうえ、ドルで償還される可能性があることの具体的な説明はなかった(弁護士に電話相談したときに、初めて気づいた人もいました。)。そんな説明をきちんと受けていれば、お金を預けていない。」というものでした。
 相談者の属性(高齢者で、30年後には平均余命を超えてしまう)や債券の額(1000万円以上、中には1億円以上の人もいた。)が高額であることからしても、銀行員が、十分なリスク説明をせずに勧誘したことが強く疑われます。
 また、相談者には、定期預金の解約時に、預け替えるように勧誘され「長年取引していた銀行なので、変なものは勧めないだろうという安心感があり、『有利な商品』と言われ、信用してしまった。」という人もおり、銀行に対する信頼があったため、あまり疑わずに契約してしまったようです。
3 当研究会の分析
 相談事例を分析すると、全国の被害に比較して、北海道では、銀行が販売した仕組債(30年債・ドル建て)に関する被害事例が多く、しかも、高齢者に被害が集中しております。
 証券会社によるリスク商品の強引な勧誘事例は、これまでも多くありましたが、銀行が、これほど大々的に問題のある勧誘をしているというのは、当研究会としても、驚いているところです。
4 問題点及び当研究会の対応
 現在の金融庁のガイドラインでは、仕組債を販売する場合には、「最悪のシナリオ」を想定した説明を十分に行う必要があるとされています(説明義務)。上記のような相談事例では、「30年間、返還を受けられない可能性が十分ある。」という点を、顧客が十分に理解できるように説明していなければ、リスク説明が不十分といわざるをえず、ガイドラインに違反している可能性が高いといえます。
 また、同じく、金融庁のガイドラインでは、金融商品(特にデリバティブを組み込んだ複雑な商品)を顧客に提案する場合には、顧客の属性(投資に関する知識・経験、資産・収入、投資意向)をふまえて提案をすべきとされています(適合性原則)。安定した運用を希望している高齢者に対して、リスクが高く、平均余命を超えるような長期償還で、しかも中途解約が出来ない商品を勧めることは、適合性原則に違反する可能性が極めて高いと考えています。
 説明義務違反や適合性原則違反があった場合に、顧客に対する損害賠償を認めている裁判例は既に相当数出されております。これまでは、証券会社の販売する仕組債(株式に連動するタイプのもの)についての被害事例が多く報告されておりましたが、銀行もかなり問題のある勧誘をしている実態が、今回の110番で明白になりました。
 当研究会としては、今後、相談者から詳しく事情を聴取し、説明義務違反や適合性原則違反があると判断される事案が多い場合には、集団提訴をすることも検討しています。
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